父の営んでいる農業を継ごうとしています。父の農地を贈与してもらおうとしていますが、この場合受けられる特例にはどのようなものがあるのでしょうか。

よくわかる農地の税金

農業を経営している者が、農業用として使用している農地の全部や採草放牧地と準農地の一部の部分をその農業の後継者である推定相続人の一人に贈与した場合、その受贈者に課税される贈与税に関しては、その贈与をもらった農地などに対して受贈者が農業を経営している限り、その納税が猶予されるという特例があります。
この猶予される贈与税額を農地など納税猶予税額といいますが、これは受贈者・贈与者のどちらかが死亡した場合は、免税になります。しかし、この免税が贈与者の死亡によるものである場合は、特例の適用をして納税猶予の対象に含まれていた農地等は、贈与者から相続したという扱いになって相続税が賦課されます。

この特例の適用ができるのは、下記の要件の全てに当てはまる場合となります。
1. 贈与者の要件:贈与が行われた日まで3年以上、継続して農地を経営していた個人で、下記の(1)~(3)の場合に当てはまらない人であること。
(1)過去に農地などの贈与税の納税猶予の特例に対する一括贈与をしている場合
(2)対象年に、今回の贈与の他に農地などの贈与をしている場合
(3)贈与を行った日の含まれる年の前の年以前に、その農業用で使用していた農地を推定相続人に対して贈与していて、その農地が相続時精算課税の適用をされているものである場合
2.受贈者の要件:贈与者の推定相続人の中の一人で、下記の要件すべてに当てはまるひととして農業委員会から証明された個人であること
(1)贈与を貰った後、その農地や採草放牧地によって速やかに農業経営をすること
(2)贈与を貰った日まで3年以上継続して農業に従事していたこと
(3)贈与を貰った日の時点で、18歳以上の年齢であること
3.特例農地などの要件:贈与者の農業用で使用している農地などの中で「準農地の面積の2/3以上を占めるもの」、「採草放牧地の面積の2/3以上を占めるもの」、「農地の全部」について一括贈与を貰うこと

*農地など:農地法第32条の定めによる通知に関するものや特定市街化区域農地などに当てはまるもの以外の農地と準農地、採草放牧地(特定市街化区域農地などに当てはまるものは除外)のこと
*特定市街化区域農地など:都市計画法第8条第1項第14号から定められている市街化区域の中に在る採草放牧地や農地で、1991年1月1日に首都圏、中部圏、近畿圏の特定の市の区域内にあるもの
*準農地:農用地区域の中にある土地で農業振興地域整備計画に用途の区分が採草放牧地や農地となっているものの中で、10年以内に採草放牧地や農地に開発され、農業用で使用されるもの
*今回の贈与の前の年以前に贈与者から贈与された準農地や採草放牧地の中で相続時精算課税を適用されたものがあったら、贈与すべき準農地か採草放牧地の面積が上記とは違ってきますので、詳しい内容に関しては税務署にお問い合わせください。

この特例を適用させるためには、贈与税の申告書に一定書類を添えて提出期間内に出すとともに、農地など納税猶予税額と利子税の額数に対応する担保を提供することが必要です。
特例を適用させた場合は、納税猶予の期間が決まるまでの間、贈与税申告の期限から3年目ごとに継続してこの特例を適用させるという内容や、特例農地などに関する農業経営に関する事項などを記された届出書の提出が必要です。

農地などに対して納税猶予を適用させ贈与税額は、下記のようなケースに当てはまることになったら、その贈与税額の一部や全額の納付が必要となります。
1.継続届出書を提出しなかった場合
2.贈与してもらった農地などに関する農業経営を廃止した場合
3.贈与してもらった農地等を、譲渡(借地権や譲渡や贈与、転用と永小作権、地上権、使用貸借による権利の設定や、このような権利の消滅・耕作の放棄があった場合も含まれます)などをした場合
4.受贈者が贈与者の推定相続人に当てはまらなくなった場合
5.担保価値が低くなったことなどで、贈担保や担保を変えることが求められる場合で、それに応じなかった場合
6.準農地に関して、この特例が適用された時に、申告期限の後10年が過ぎる日までに、農業用で使用していない準農地がある場合
7.都市営農農地などに関して、都市計画が変更されたなどのことによって特例農地などが特定市街化区域農地等に当てはまることになった場合や生産緑地法の定めによる買い取りの申し出があった場合

この贈与税額と同時に、税額に対する利子税の納付も必要となります。この利子税は、納付しなければならない税額に関して贈与税申告の期限の次の日から納税猶予の期限までの日数に応じて年3.6%の利率で計算されます。
しかし、この利率は、各年度分の前の年の11月30日の日本銀行から定められる基準割引率に0.04を足した割合が年0.073に達しない場合は、その年中に以下の計算式で算出された割合となります。

0. 036X(前の年の11月30日の日本銀行から定められる基準割引率+0.04)/0.073

また、2014年1月1日からの期間に対する利子税の割合は、「前の年の11月30日の日本銀行から定められる基準割引率+0.04」が「前々年の10月~前年の9月の期間中の短期貸付や平均利率の割合として財務大臣から告示される割合に0.01を足した割合」に改正されたところで計算した割合になります。